「えーっと、すいません。あの、もう一回言ってもらえませんか?」
私の名前は上坂真穂。
引退間際の部活に燃えている、至って普通の高校三年生。
そんな私だが、今猛烈に混乱している。
その混乱の原因が、私の目の前にいるおとこのこ、高田拓海だ。
「だからいってんじゃん、俺とお前、腹違いの兄弟だって。」
いや、普通そんなこと突然言われて信じられる人いないでしょうが。
なんだその罰ゲームは。
私は心の中で毒づく。
「あの、すいません、冗談ですよね?」
「いや、思いっきり真面目な話なんすけど……」
「じゃあ、何か証拠でもあるんですか?」
私がそう切り出すと、相手は携帯を取り出して、おもむろに電話を始める。
あの、全く先が読めないんですけど。
私結構暇だけどもう帰りたいなー
なんて思っているうちに、相手の電話が繋がったようだ。
「もしもし?親父?俺、俺だよ、拓海。例の件、やっぱダメみたいだから、直接説得してくんない?ん、わりーね」
相手が私に電話を向ける。
えー、とりあえず話せってこと?
誰だよ……
私は恐る恐る電話を受け取り、口を開いた。
「もしも……」
「ま・ほー!お父さんだよー!」
電話の相手は紛れもなく私の父、上坂浩司だった。
………まじすか?
「拓海の話、やっぱ信じらんないみたいだから、俺からも話すね。二人共俺の子どもだよ。母親は違うけどね。」
ちょいと突然すぎやしませんか?
私の頭にそんな思いが過ぎったが、この際事実確認を優先せねば。
「ええっと、要は、この話はほんっっっっとにほんとってことでいいんすね?」
あまりにも動揺しすぎて、実の父親に対しても敬語になっている。
しかしそれどころではない。
落ち着け、平静を装うんだ私!
「そういうこと!ちなみに今日からうちで引き取るからよろしくねー」
「……え!?ちょ、おまっ!!」
いつの間にか電話は切れていた。
えーと、つまりこういうことですね。
①私に異母兄弟がいた
②その異母兄弟と今日から一緒に生活
③私の普通で素敵な高校生活とはさよなら
…………無理っ!!!
*****
なにこの無茶な展開。
先程の堂々たる異母兄弟宣言から早三時間。
父の仕事も終わり、現在親子三人によるファミレス会議が始まろうとしている。
勿論、議長は父だ。
「さて、いっちょおっぱじめるか!」
とりあえずおっぱじめるとかそうこう言う前に、状況説明してほしいんですけど。
本当にこの人が実の父親かと思うと、たまに切ない気持ちになる。
まあ、このお気楽さこそ私の父の長所でもあるからいいけど。
「よーし親父!始めようぜ!」
しかし彼らのポジティブさにはついて行けない。
……泣きたい、泣いていいですか神様?
そんな私の心の涙は無視され話は進む。
「まず設定からな!拓海は俺の友人の子どもってことで、父親は既に他界、母親は重度の体調不良のため入院中。だから暫く俺の所で預かるってことでどうだ?」
「完璧だぜ親父。な、真穂!」
拓海さんはいきなり私を呼び捨てで呼んだ。
馴れ馴れしいなあ。
でも疲れて反論するのもめんどくさいからいいや。
「分かったから、次進めてくれる?」
私は先を促した。
「じゃあ次いくぜ!お前ら学校ではどうするつもり?」
「仲良く兄弟しよーぜ、真穂」
「無理」
私は光の速さでツッコミを入れた。
そもそも私と高田拓海との関係なんて、バレーボール部の部員同士なだけだ。
今回までまともに口さえ聞いたことがない。
他人というか顔見知り。それくらい薄い関係だったのだ。
それをいきなり兄弟仲良くしようと言われても無理。
これ普通の反応ですよね?
周りもびっくりしますよね?
私はその旨を伝えた。
「確かに!これみんなに話した時はびっくりされたわ」
「そんなの当たり前でしょうよ……ってちょっと待て」
ちょっと拓海さん、今何と仰ったのでしょうか?
私の耳が確かならば、みんなに話したと言ったよね!?
過去形で言い切りましたよね?!
私はとってもいやな予感がした。
「……誰に言った?拓海さん?」
私の只ならぬ雰囲気を感じたのか、拓海さんは素直にこう答えた。
「……男バレのタメの部員です」
「…いつ?」
「…一週間前」
「…なんで?」
「………俺、仲間には嘘つけなくてさ」
そう言って拓海さんが明後日の方向を向くと、なぜか周りの雰囲気が暗くなる。
え?私のせいですか?
なんか私が悪者みたいなんですけど?
それよりなによりいろいろ終わった。
私の普通の高校生活。
*****
ある日の朝。
「真穂っ!おせーぞ!俺先にいくからな」
「知るか!とっとと行け!」
拓海さんがうちに引き取られて早一週間。
彼はすっかりうちに順応していた。
あり得なくないですか?ほんとに。
最近はこんな事にツッこむことをあきらめはじめていますが。
もういろいろ何かを悟ってしまったよ、私。
何が変わったって言ったらいろいろ変わった。
まず、アベック部が故、登下校を共にすることが多くなった。
昼、事情を知る男バレ集団と意気投合。飯を共にすることが多くなった。
拓海さんを呼び捨てで呼ぶようになった。
……なんか端から見たら完全に勘違いされる気もする。
だけどいろいろ考えるのもかなりめんどくさいので、私の思考は流されるままだ。
そんなことを考えながら玄関を開けると、拓海が笑顔で私を待っていた。
「遅いぞ、真穂」
「悪い、もたついた」
私もニヤっと笑みを返す。
実の所、私の日常はそこまで変わらずに送ることが出来ている気がする。
拓海が来てもそこまで変わったもんじゃない。
兄弟が一人増えただけってもんだ。
だから、こんな毎日も悪くない。と思えるようになってきた。
私は少し遅れて自転車のペダルを漕いだ。
「拓海!待てぇ!置いてくな!」
今日も朝日が眩しい。
*****
<あとがき>
そんなわけで早速書き始めました。
「おんなのこ・おとこのこ」
そんなんあり得るか!と言うB級映画のノリを、シュールなコメディタッチで書いていきます。
よろしくねヽ(´ー`)ノ
そしてプロフィール
上坂真穂
高三 身長160cm後半くらい
ショートカット(パーマっぽい癖毛)
筋肉質でがっちり
高校の時にクラスにひとりはいませんでしたか?
部活に燃えている男前な女子。
そんなイメージです。
結構唯我独尊。
高田拓海
高三 身長170cm半ばくらい
男子としては長い髪で癖毛
ひょろひょろ
こちらは部活好きなんだけど、他にも好きなものがあるから、そんなに頑張っていない男子をイメージしてます。
真穂よりおしゃれを気にしてそう笑
■関連サイドストーリー■