7~ぼくのきもちはかりしれず
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『・・・・・私、ほんとは彼氏居るの』

なんだよ、戦いを挑む前から敗戦かよ。

一週間前の真穂の言葉が頭から離れない。
 

遊園地デートの最後に彼女はこう言った。
その言葉を聞いた俺といったら、
「じゃあ彼氏さんに悪いから、帰ろっか」
なんて情けないセリフを彼女に告げてみたり。

そんなことを思い出しながら講義に出ているが、
正直全然頭に入ってこない。
教授の言葉がまるでBGMみたいだ。

あーあ。
好きになったくせに情けねえ男だな、俺。
 

でもさ、そんなこと宣言されたらひくしかないじゃねーか。
ずるいよな。
なんで彼氏いるのに、いないって言ってみたり、男と一緒にデートしたりするわけ?
わっかんねーなあ。
それこそ今まで一緒にいた女の子たちとかわんねーじゃん。
 

俺は何でお前のこと好きになったって言ったら、
「今までの女の子とは違うから」なのにな。

別に俺と彼女の間が気まずくなったわけではない。
ただ、俺が勝手に気まずく思っているだけ。
彼女は俺の事別に悪く思っているわけではない・・・たぶん。
ただせつないのは俺だけだ。

デートの後、
彼女は部活でも、キャンパスであっても至って変わらない態度で俺に接してきてくれる。

なのに、俺、なんだかアホみたいだよな。
勝手に一人で盛り上がって、勝手に一人で悲しくなって。
ほんとただのバカ。

講義終了まであと10分。
あとで友達にノート見せてもらおう。
 

皮肉にも前の席に座っている真穂を見つけた。

ああ、そうだ。
この授業は彼女と一緒の授業だったっけ。
女友達と一緒に座ってる。
茶色いパーマのかかった髪の毛。
うなじが少し見えるぐらいの長さ。
そうそう、柑橘系のフレグランスが好きで、
この間も上品ですっきりとした匂いを漂わせていた。
よくわかんないブランド香水を好まないのが彼女らしくて、
俺はまた彼女に惹かれていったものだ。

俺は心の中で苦笑い。
やっぱり彼女のこと考えてんじゃん。
あーあ、情けねえ。

俺、この気持ちをこのまま一人じゃ消化できない。
彼氏いても伝えるだけで、すっきりするかも。
 

そんなことを思っていたら、講義が終了していた。
今日はこれで講義もないし、部活もないし。
さあ、家に帰って・・・たまには一人でビールでも飲むか。

ぼーっとしながらとぼとぼ歩きだす。

「ーーーーー!!!」

ん?なんか今声が聞こえたような・・・?

「拓海っ!!何度言ったら聞いてくれるのよ~!!」

って!!!もしかして・・・・
後ろを振り向くと、まさに彼女ー真穂が立っていた。

「ごめん、ちょっとぼーっとしててさ、ほら、さっきの授業眠かっただろ?」

なんて軽くジョークを飛ばしておく。
すると彼女も笑ってくれた。

そう、前となんとも変わらないやりとり。
変わったのは俺の気持ちだけ。

「ねえねえ、一緒に飲みに行かない?」

え?飲むの?二人で?
またそうやって俺を誘惑する。

「え?彼氏はいいのか?」

そう、心配するふり。上辺だけ。
でもほんとはとっても嬉しい。
騙されているのにな。
ほんと情けねえ。

「まあまあ、こないだのお礼しなきゃ。」

彼女はすらりとはぐらかす。
まあ、いいや。
一緒に飲みに行けるだけでも俺はうれしい。

「わかった、だけど後から彼氏が押し掛けてきて、俺を罵倒しだすとかナシだぞ」

また、冗談でごまかすと、彼女は「ないない」といいながら笑う。
こうやってごまかさないと、俺の動揺やら歓喜やらなんやらが入り混じった気持ちが彼女に見透かされるような気がして。

「いつ行こうか?」

「明日にしよう!部活もないし」

「は!?明日!?」

 

「ダメ?いいじゃん」
 

複雑だけど突然の嬉しい予定。
もしかしたら、俺の気持ちだけでも伝えることができるかも。
そう思って、俺は嬉々として彼女の申し出を承諾した。
もう負け戦は分かってる。
だけど、言うだけ言ってすっきりしたい。
いつまでももやもやするのやだし。
 

よく「言うだけの告白は相手に迷惑だ」って話を聞いたことがある。
だけど、こうしないと俺がどうにかなっちまうし、
部活にも集中できない。
 

だから、いいんだ。

俺はそう決意をした。
酒の勢いでいい。言ってしまえばこっちのものだ。
 

すっきりするだけ、俺の気持ちを伝えるだけだ。
 

*****


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