「うっわー、すっごいおっきいね!」
大会から更に2週間後。
俺たちはデートの約束を実現していた。
地域に出来た遊園地。
真穂が優待券をもらってきたのだ。
「一日中遊べそうだなあ~」
なんて俺がつぶやくと、彼女がそうだねとうなづいた。
こんな小さなやり取りもなんだか嬉しくて、俺のテンションも上がっていく。
かつてこんなにテンションの上がった恋愛したことあったか?
俺は自分に自問するが、ここまでの恋愛はなかったように思う。
俺の付き合い方って、いつも好きになってもらってスタートしたから、
自分で「この人」って決めたことってなかった。
なんとなく「好き」って言われて好きになっていったから、
ここまでアツくなることもなくてさ。
「拓海の私服ってなんかオシャレじゃない?」
二人で肩を並べて歩いていると、彼女が急にそんなことを言い出す。
「なんだよ、いきなり」
「だってそう思ったんだもん」
そんなこと急に言われたら照れる。
というか俺としては彼女が可愛いと思う。
かっちりしたジャケットにカーキのひざ丈のスカート。
黒いタイツとパンプスを履き、
部活の時にはしていない化粧もばっちりしているし。
なんだかいつもよりも力が入っているような気がして、
俺はまた少し嬉しくなった。
*****
「よーし、拓海!あれ乗ろう!!」
彼女が指さしたのはこの遊園地の目玉。
絶叫ジェットコースター。
俺も絶叫は大好きなので、快く承諾する。
「それにしても空いてるよね~」
「そうだな、でも、たぶん同じ大学のヤツらは結構いるぜ」
ジェットコースターの待ち時間。
俺はここでちょっと意地悪をする。
今日は平日なので、あまり人は多くないが、その代わり暇を持て余す学生カップルが多い。
こんな状況で彼女は俺とのデートを意識しているのか、ちょっと知りたかった。
「ほ、ほんとだ!あ!学部の先輩!男の人と一緒に歩いてる!」
「彼氏だろ?」
「そっかー」
「俺たちも傍から見れば、どう思われるんだろうな?」
「うーん、カップルですか?」
ニヤッとして彼女が笑いながら答える。
なんだか俺の気持ちさえ見透かされているような気がして、
なんとなく恥ずかしくなった。
*****
「さーて、じゃあそろそろ帰りますかあ~」
いろいろなアトラクションを楽しみ、そろそろ夕方。
ジェットコースターでぎゃーぎゃー喚くし、
コーヒーカップで回しすぎて気持ち悪くなってるし、
お化け屋敷では、俺を逆にリードするという妙な男らしさを発揮してみたり……
本当に見ていて面白い人だ。
あっという間に時間が過ぎ去ってしまったように感じる。
もっと彼女と一緒にいたい。
正直そう思った。
「そうだな、じゃあ駅前でメシでも食って帰るか」
「賛成っ!」
二人で肩を並べて歩く。
俺、175cm。彼女168cm。
この身長差がなんとも言えない。
すこし俺が彼女の歩幅に合わせて歩く。
「ねえ、拓海。ひとつだけ言っておきたいことがあるの」
ぽつり、彼女が俺につぶやいた。
まさか?とは思うけど・・・・・・
はやる鼓動を押さえつけ、何?と短く聞き返す。
「今までウソついててごめん」
「え?どういうこと?」
「・・・・・・・・私、ほんとは彼氏居るんだ」
頭の中が真っ白になった。
*****