4~きみのやさしさはかりしれず
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「かんぱーいっ!」

俺と彼女がアドレス交換をしてから二週間。
バレー部一年、初めての宅飲みが開催された。
女子3人の男子3人、なんだか合コンみたいだよなぁーと俺は思った。

ちなみに会場は聡の家。
キャンパスから一番近いからだ。

彼女―真穂とはたまにメールをする。
授業のこと、部活のこと、時々しょうもないこと……
やっぱメールでも彼女はあっさりしてて、変に気を使う必要がない。
メール苦手な俺にとっても有り難い。
この人は女の子か?とたまに思うけど、
まあ、俺にとって気楽なことには違いないから、実はそんなに気にしていない。


みんな酒が回り始めて、だんだん雰囲気が盛り上がってきた。
話の内容も若干深くなってくる。

「ねーねー、拓海クンって彼女とかいるの?」

女子部マネージャーの子、水香が尋ねた。
この手の質問は、まあ基本事項だよなーと思いながら俺は答える。

「そーいうのはいねーよ、てか、みんなは?」

そう言って皆に話を振った。
好奇心で真穂の恋人の有無が気になったってのもあったりしてさ。

俺は大学進学と同時に彼女と別れていた。
向こうが振ってきた。理由は「地域が離れるから」
すげー自分勝手だよな、と思いながらも、
俺としても引き止めるほど好きでもなくなっていたので、
何も揉め事もなくすんなりと別れることができたのだった、

「俺いないよ」
「アタシもアタシも」

他の皆の答えは適当に相打ちを打っておく。
さて、ついに真穂の番。

「私?いないよー」

「へぇー」

まじか!
まぁ、妥当なような、意外なような……
なんとなく複雑な気持ちになった。
こんないいやつ、なんでいないんだ?と思う反面、
確かに男っぽくてさっぱりしてるから、気高くて近づき難いオーラが出てたりもする。

とにかくいないことが分かって、なんだかほっとした自分がいた。

あれ?なんで俺はほっとしてるんだ?
不思議な気分だった。


********************

飲み会は深夜2時まで続いた。

酒でちょっと頭がハイなまま、俺は真穂と帰路を共にしていた。
下宿先が実は近かったのだ。

「ねぇ、拓海って遊園地好き?」

「うん、好き。特に絶叫系」

「ほんと!?気が合うねぇ、私も一緒だよ」

真穂とはこういう細かい趣味がよく合う。
びっくりするぐらい。

「じゃあ、そんな君にプレゼント!バイト先のお客様からもらったんだー」

貰ったのは、県内にある遊園地のペアチケット2枚。

「誰かと行ってきなよ」

え?一緒に行こう!じゃなくて?
俺は一瞬戸惑った。

「誰といけばいいのか分かんないからいらねーよ」

だからこんな台詞で断ってみたり。

「またまたぁ、拓海はモテそうだから誰かいるでしょ?とりあえず、とっときなって!」

なんだよそれ…どこのおばちゃんだよお前は…
でも、どうせ誰かと行くんなら…

「お前と行く。じゃなきゃ行かない。」

俺自身も一瞬自分の口から出た言葉にびっくりした。
普段の俺なら絶対こんな言葉なんて出ねぇ。
これが俗に言う「酒の力」ってやつですか?
だけど、それが俺の正直な気持ちだったりするので、俺は真穂の返事を待った。

「へ?私!?私でいいの?じゃあ喜んで!」

その返事は意外にも好意的で、俺は拍子抜けしてしまった。
だけど同時にむちゃくちゃ嬉しくってしょうがない。

と、そこで丁度家への道が別れるところにさしかかった。

「じゃあ詳しい日にちはまた後で決めよ!」

「了解」

そうして俺たちはおやすみを言い、それぞれの道に別れたのだった。

*****

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