3~きみのあかるさはかりしれず
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ふぁぁ~ねみぃー

俺が彼女の名前を知ってから3日経った。
午後一の学部専門授業は最高に眠い。
頭がぼーっとする感覚に苛まれる。
いかんいかん、あと5分の辛抱。

キーンコーンとチャイムが鳴り、俺は級友と一緒に校舎の外へ出た。

「ふあーっ…あぶねぇあぶねぇ」

「ほんとだよ、拓海半分寝てたぜ」

「お前もだろ?」

はははっと級友と笑い声を上げる。

「……――!」

と、ふいに聞き覚えのソプラノが聞こえた気がした。

いやさすがにそれは気のせいだろ。
何考えてんだ俺は…過剰反応もいいところだ。

「…拓海っ!高田拓海っ!」

いやっ、気のせいじゃない。
まじで聞こえた!

俺は光の速さで後ろを向くと、パーマがかった茶色のセミショート、
少し化粧めかして、黒いジャケット・ちょっと緩めのジーンズを履いた彼女―
上坂真穂が立っていた。

「あー、やっと気づいてくれた。」

俺は級友に先に行くように伝え、彼女に悪い、と謝った。

「いーよいーよ、てか同じ学部なんだね!びっくりしちゃった」

「マジ?!さっきの授業いたのか?!」

「うん、いたいた。拓海、寝そうだったでしょ」

「うわぁ…一番マズいとこ見られちゃったな」

彼女との会話は途切れもなく続いた。
というか、彼女が会話上手だ。
出身、誕生日、今住んでるところ、授業の話、高校時代の話…
そつなく話題を振ってくれる。

気がついたら30分近く時間が経っていた。

「うわぁ、結構話し込んじゃったね。ごめん、時間大丈夫だった?」

「全然いーよ、なあ連絡先教えて。部活のこととか、学部のこととか、聞くかもしんねーし」

「もちろんいいよ!私こそ色々と聞いちゃうかも。」

意外にもスムーズに連絡先を聞いてしまったことにびっくりした。
今まで男でさえこんなにすっと聞いたことなかったのに。

そう思いながら、俺は彼女と赤外線で連絡先を交換した。

「それじゃあ、私これからバイトだから行くね!じゃままた!」

彼女は手を振ってから、くるっと回れ右をしてその場を去っていった。



気取ってなくていい人だ。と俺は思った。

今まで関わったり、付き合ってきたりした女の子とは違う。
からっとしてて、湿り気がない。
別に会話に気を使う必要もなくて、とても楽だ。


なんだか俺の女の子のイメージからは程遠い、だけどいやとかじゃなくて、好感が持てる。


俺だって人並みに「恋」という気持ちを体験したことがあるけど、
別に彼女に恋している訳じゃなくて………
何だろ?憧れみたいな、そんな気持ちを抱き始めていた。

バレーもできて、性格も明るい。

ほんと完璧なやつじゃん、うらやましいよなぁ…


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