2~きみのえがおはかりしれず
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「ううっ…気持ち悪ぅ」

部活の新入生歓迎会。
初めての酒でわくわくしてたんだけど……
呑まされるわ呑まされるわ…
さいっこーに頭がぐわんぐわんで気持ち悪ぃ
どうも新入生ってこういう立場らしい。

誰とは知らない女の先輩が、吐いたらすっきりする、と教えてくれたので、俺は今トイレに向かう途中だ。

「うわぁっ!」

誰かにぶつかった気がして、前を見ると……この間、練習中に俺が目を留めた例の彼女だった。
彼女もだいぶ呑んでいるらしく、足元が覚束ない様子だ。

「あ、すいません」

俺はなんだか恥ずかしくなって顔を背けてしまった。
さっきから頭がおかしい。

「きみ、一年でしょ?私も一年だから、タメでいいよ!」

きれいなソプラノの声が聞こえてきた。
ていうか意外な展開。
彼女が…一年?タメ?

「……あんた、一年だったのか?レギュラーなのに?」

あまりにも意外過ぎて、思わず彼女に尋ねてしまった。

「へへっ、まーね!私、真穂。上坂真穂。きみは?」

「俺は…高田拓海」

「ポジションは?」

「ら、ライト」

「私と一緒じゃん!」

彼女はからからっと笑った。そして、よろしくね、拓海。と手をさしのべた。
俺は何かに惹かれるようにその手に触れ、握り返した。
バレーをやっているはずなのに、身長の割には小振りで、柔らかい手だった。

(うっ…まずい、吐く!)

と、突然吐き気が頂点に達したので、俺は彼女をはねのけ、トイレへ直行。
彼女がびっくりしている様子だったが、それを気にしている余裕はなかった。
数分後、全てを出し切った後、もう彼女の姿は消えていた。

*****

次の日。
俺は二日酔いでベッドから出てくることすらままならなかった。
あの後、男子キャプテンの先輩に絡まれ、めちゃくちゃに呑まされて正直記憶がない。
どうやって家に着いたかも全く覚えていなかった。
それゆえか、彼女―上坂真穂の笑顔と手の感触が色濃く記憶に残っている。

彼女がどんな人なのかもっと知りたい。

俺は自然とそんな気持ちになった。

*****

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