10.5月 少年少女の絶望と希望と
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「2人とも、ちょっと大事な話がある」

父がいつもより・・・というか普段なら見せない顔で私たち(私と拓海ね)に声を掛けた。
なんか、こんなに真面目な顔見せられるのは初めてなんじゃない?

「なに?」

「突然なんだが・・・・・」

妙にタメる父に私はしびれを切らしそうになる。
早く言え。いつもの如く。

「拓海、お前のことがバレた」

「「なーんだ、そんなことか・・・・ってええええええ!!!!??????」」

私たちは声を揃えてノリツッコミをしてしまったが。
それはヤバいんでない?
ていうかほんと、まじでやばいでしょ。
さすがの父でもさらっと宣言は出来なかったようだ。

「なんで!!???」

「むしろいつ!!???」

「しかもどうやって!!???」

「まあまあ、待て。順序良く話していこう。ただし、いろいろ心の準備をしてほしい。」

一体私たちの知らないところで何が起こっていたんだ。
ぶっちゃけ拓海は二の次なのでどうでもいいんだけど、私の家族はどうなっていくのか・・・・妙に心配だったり。
まあ、寧ろすべてがバレてしまえば、私たちはきっとこのままじゃいられない。
なんとなく、結末が見えている話だけど聞かなければならない。
いつかこんなことになるんじゃないか、なんて分かってた。
だけどどこか遠い話で、もしもの話だった。

「準備はいいな?とりあえずバレた時期は先週だ。」

「うそ・・・全然分からなかった」

「まあ、そうだろうな。誰のせいでもない。京子は探偵を雇って、拓海の身辺を調べていて・・・・その結果が先週に出たってわけだ

拓海の母、そして父親・・・・それだけ分かれば十分すぎるほどにすべて分かるだろ?その証拠を元に、京子は俺に話をつけたってわけだ。まあ、大体想像つくだろ?」

「・・・・・親父、で・・・俺はどうなるわけ?」

「まてまて、順番に話すから。まずは京子と俺。真穂、お前と恵美には悪いがたぶん離婚になるだろうな」

そんなことになると思っていたけど、恵美や母に会えないのは少しつらい。
確かに私はパパっ子ではあったけど、別に母が嫌いな訳ではないし。
恵美とも必要最低限の話しか出来ないけど、私の大切な兄弟だ。
全く会えないとなるとそれはそれで辛い。

「心配すんな。仲が悪くなるのは俺と京子だけだ。お前は正真正銘俺と京子の子だから、京子がお前に対して辛く当たったりすることはない。そういうことをする奴と結婚するような俺ではないさ」

不安な顔をした私に対して父がこうフォローを入れた。
若干俺自慢が入っていてイラッとするけど、それどころじゃない。

「明日から事実上別居に入るわけで・・・とりあえず京子と恵美はあっちの実家へいくことになってる。会いたければいつでも会いに行っていいぞ、近いしな」

道理で今日、朝早くから荷物の準備をしていたと思ったんだよね。
そういうことだったのか。

「さて、拓海だけど、はっきり言えばお前は京子たちと接触しないほうがいいだろう。」

「・・・・・ごめん」

「・・・・・拓海」

拓海が震えながら一言そう言った。
そうだ、一番ショックなのは拓海だ。
この夫婦を引き裂く大本になった存在といっても過言ではないのだから。

「いいか、とにかくすべてが俺の責任だ。拓海の秘密を守り切れなかった。だからお前たちが何か責任を感じたりなんだりするな。すべてを俺のせいにしろ。いいな、親父命令だ」

*****

私の部屋で、兄妹2人。
会話はないけど、兄は部屋を離れようとはしない。
なんとなく不安で、どうしようもない。
これから生活がどうなるとか、ああなるとかあんまり想像はつかない。
それよりなにより、家族が崩壊した、という事実が私たちに付きまとう。

拓海がここまで落ち込むのは、菜穂子さんの件で病院に呼びだされた時以来だ。
塞ぎ込んでいて、目が死んでいる。

「ねえ、拓海。」

反応はないが、私は話し続ける。

「あんたが責任感じることはない。父さんも言ってたじゃん」

「俺の事・・・恨んでないの?」

「バカ言え。恨むか。」

「なんで・・・なんでなんでなんで!!!!!!!」

拓海は突然私の胸ぐらをつかみ、怒鳴りつける。
彼の怒りと不安に満ちた・・・・鬼のような形相を私は初めて見た。
だけど私だってひるまない。真っ直ぐに彼の眼を見つめた。

「俺はお前の家族を壊したんだ!!!!!!恨めよ!!俺を恨んだらいいんだ!!!」

「・・・・・・・」

「なんでだよ、どうしてみんなそんなに優しいんだよ!!!!俺のせいなんだ!!!全部!!!!」

「・・・・・・・」

「俺なんて・・・・生まれてこなきゃよかったんだ!!」

私はその一言を聞き、思わず拓海の胸ぐらをつかみ返した。

「バカなことを言うな!!!甘ったれ!!!」

拓海が少し引いたのを私は見逃さない

「だれがそんなこと言った!菜穂子さんが聞いたら悲しむだろうが!!!親父だって私だってあんたを家族として認めてるからこそ一緒に暮らしているんだ!!」

胸ぐらをつかむ力が少し緩み、拓海は私の胸に泣き崩れた。

私たちは兄妹だ。
母親は違えどその事実は変わらない。
変わるのは父と母の関係だけ。

他は変わらないんだ。

強く、生きていく。


*****

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