ep17 and Then
  

「うーん」

朝の日差しがまぶしい。
少し伸びをして目を覚ますと、そこにはまだすやすやと寝息を立てている春がいた。
よほど疲れたのだろう。
何も着ないまま、気を失うように眠ってしまったのだから。

昨日は少し加減ができず、彼女に無理をさせてしまったのは反省しているが、
正直、あんなしおらしい彼女を見てしまったら我慢できないし、
その後の必死に応えてくる彼女を感じたら堪えられないし・・・・・。

時にはそんな日があっても、いいよな?

少し罪悪感を感じながらも、濃密な時間を過ごせたことに満足していた。


しばらくすると、俺が起きたことで自身も目覚めたであろう。
隣に寝ている可愛らしい恋人が薄目を開けて、うーんとあくびをした。

「春、おはよ」

すると、おぼろげながらも、おはよと言う声が返ってきた。
だんだんと覚醒し始めたのか、目がぱっちりと開きはじめる。

「なに?どしたの?」

「え??」

彼女にそう言われるまで、俺はずっと春を見つめていることに気づかなかった。
別になんでもないよ、と言うと、へんなの、とくすくす笑う。

「ねえ、けいたろう」

半分寝ているような、とろんとした目で彼女がそう呼ぶと、
なんだか昨日のことを思い出してしまって、俺にとっては精神衛生上あまりよくない。

「やっぱ、私先生になりたいんだ」

話の意図が上手くつかめずに黙っていると、彼女はまた話し始めた。

「だから、来年は実家に帰ることになると思う」

「え!?」

「だって、バイトしだけで1人暮らしして、その上勉強もするとなると・・・生活はできると思うけど、試験に受かる自信はない」

「そりゃそーだけど・・・」

「慶太朗はそれでもいい?」

ロマンティックな朝から一転、非常にシビアな話になってきてしまった。
ただ、春の言っていることが最善な策のように思えるからこちらは反論のしようがない。

「もちろん、私だって・・・・・・寂しいんだけど」

ちょっと照れて可愛いセリフを言うのが、俺にはとてもたまらない。
たまらないんだけど・・・・・。

「もっと、いい方法ないかな?」

話の本題がシビア過ぎて、思わずこんなこと口にしてしまう。
だってさ、急にそんなこと言われても、心の準備ってやつが・・・。

「とりあえず、就職口は探してみようと思う。公務員にこだわらなければ、私立教員って道もあるんだし」

だけど、全国津々浦々私立学校なんて山ほどあるが、募集自体は少ないだろう。
それこそどこに行くかなんてわからないじゃないか。
もしかしたら、今住んでる所よりも遠い場所に行ってしまう可能性だってある。
俺はずっと春と一緒にいたいんだ。
だったら、こんな条件はどうだろう?

「・・・・・俺の地元に就職しない?」

「・・・・・へ?」

「俺の地元なら、私立いっぱいあるし・・・それに、春がどっか遠くにいくのはやだ
来年、俺もそこに就職するから!!!」

そう言い切ると、春が顔を真っ赤にしている。
言ってみて初めて、俺は自分の言葉の重さに気づく。

あれ?これってもしかして・・・?
ちょっとプロポーズっぽいこと、入ってる!????
いや、それはなんていうか、その・・・
どうフォローをいれようか迷ってしまう。

「・・・・うん、じゃあ私、そっちの就職頑張ってみる」

そんなあたふたしている俺を差し置いて、ぱあっと綺麗な笑顔で彼女は頷いた。


「俺も先生になるから」

「え!?ヤじゃなかったの!?」

びっくりして尋ねる彼女。
だけど、あの1カ月の実習やってみて、俺は決めたんだ。

「そ、だから来年、ちゃんと待ってて」

そう言うと、彼女は自分の唇を指してきた。

「誓ってくれる?」

ぷっ!
またなんてかわいいことをするんだ。
・・・・ていうか、んなことどこで覚えてきた!???
まあ、さしずめ由佳子さんか智美さんだろうけど・・・・・。
年上なのに、こうやって甘えてくるところが、俺の琴線をジャンジャンと鳴らしてくれる。


これからも俺たちは一緒にいる。
ときどき、くだらないことでけんかしたりすることもあると思うけど、
それでも俺はきっと、彼女のことが好きだろう。
年上で、しっかりしているのに、どこか年上らしくない彼女。
俺はこれからも彼女にずっと惚れ込んでしまうことだろう。


誓いのキスを待っているオヒメサマに、俺はしっかりとキスをした。


春、お前をもう離さない。

唇を重ねる瞬間、

そう、誓った。

 

*****

最後までおつきあいいただきありがとうございました☆→あとがき

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