time slip ?
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「拓海…痛い」

「がまんしろ」

「き……き、きついっていってんだろボケぇ!!」

「だから我慢しろ!てか、浴衣の帯ぐらい自分で結べ、アホ!!!」

「だからってめちゃくちゃ締めてんじゃねーよ!!痛い!!!」


今日は近くの神社で地域のお祭りがある。
参加しよう!って鼻息荒くしたのは………何を隠そう私なんだけど。
だけど、浴衣を着るのにどうしてここまでやるかなぁ~
……ったく、酷い兄だよね。

ぎゅうぎゅうに帯を締められて、行き絶え絶えになった私だが、久しぶりに化粧をして、髪をまとめたら……

「うん、いいかんじ!」

なんだか大人な雰囲気になった。

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「お前、なかなかいい感じになったじゃん」

お囃子が流れる近所の神社。
私と拓海。二人で歩く。
もちろん、拓海も浴衣を着ていて、なんだか雰囲気満点だ。
うちの周りなら知り合いもいないし、周りの目を気にせず二人で歩くことが出来る。

「ううーん、気を遣わなくて楽だね」

「そだな、なんだか気楽だよなー」

そんなことを言いながら歩いていると、幼い姉弟らしき二人が私たちの前を過ぎった。
なんだか穏やかではない。

「たくみのばーか、もういっしょにあそんであげないんだからぁ!」

女の子が言うと、

「まってよーまほおねえちゃん、ぼくがわるかったよー」

男の子が後を追った。

「た、拓海?」

「まさか同じ名前のきょうだい?」

私たちは唖然として、彼らを見つめると、女の子が更に続ける。

「おとうさんとおかあさんからはぐれたのも、ぜーんぶおまえのせいなんだからね!」

「お前に似て口悪りぃな、この子」

なんだと?たわけが!
私は拓海に一発チョップを喰らわる。
すると今度は男の子がこう言った。

「なんだよぅ、おもしろいものみつけたって、ぼくをつれてったのはおねえちゃんだろ!」

「あんたに似て口答えするのね、あの子」

「っせー黙れ」

このまま二人はしばらく姉弟はけんかをした後、親を見つけて、
何事もなかったように仲良く手を繋ぎ、人混みに紛れていった。


「なあ、真穂。もしかしたら、俺たちもあんな時があったかもしれねぇよな」

「そーだね、あの親たちのことだから、何があってもアリっちゃアリ。知らないうちに会ってたかもね。」

なんだか幼かったころの自分たちに会ったような気がして、
私たちは不思議な気分になったのだった。



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<あとがき>

幼真穂と幼拓海。
想像したらこんな感じだろーなと思って書いてみました。

むしろ主従関係はっきりしすぎ。